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地域に残る伝統文化を訪ねよう:ベトナム

地域に残る伝統文化を訪ねよう:ベトナム

報告者:東京事務所 新石

6月25日、ラムモンクァン中学の子どもたちを連れて、フエの伝統文化が残る村を訪ねました。夏休みの課外活動です。ちょうど同時期に私も約3年ぶりのベトナム出張で同行が叶いましたので、現地の様子を私の目線から報告したいと思います。

 

BAJでは、フエの小中学生たちに「環境教育」をテーマにさまざまな授業をしていますが、地域の伝統文化についても積極的に教えています。というのも、昔から現在まで残っている生活習慣や文化は、その地域の自然環境と馴染んでいるからこそ、現代に伝わってきているものだからです。伝統文化を学ぶことは、その社会が自然とどう調和してきたのかを学ぶきっかけになります。

 

話は変わりますが、同じくフエでおこなっている小規模農業の支援活動も、農家の生計向上を図るだけではなく、農家が畑という形で大切にしてきた自然環境を守っていきたいという思いがあります。どちらも自然と社会の持続可能なあり方を学ぶ活動です。

 

ここ2年、なかなか生徒たちを外に連れ出す機会を作れませんでした。コロナの影響です。幸いなことにフエの感染状況は落ち着いており、海外からの観光客もどんどん受け入れはじめています。子どもたちを連れ出すには絶好のタイミングでした。

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最初に訪ねたのは、シン村です。

ここでは、伝統的な版画の技を伝える人がいます。名前はフックさん。年齢は70歳を超えています。現在、シン村で版木を作れる唯一の職人です。版画で刷った紙は、かつては宗教的な儀礼に使われていました。動物や人間が画かれた紙を燃やすことで病気を祓ったり、家族の健康を祈ったそうです。いまは観光土産や美術品として購入されることのほうが増えてきています。

 

昔はたくさんの職人たちがいたそうですが、多くの人たちが辞めてしまいました。ベトナム南北分断後に「迷信異端」の禁止が強くおこなわれた時代の影響です。貧しい状況もあって儀礼で版画の紙を燃やすのはもったいないと思われたそうです。この頃、多くの人が版画製作から離れていきました。貴重な版木も多くが燃やされてしまったそうです。

 

まず驚いたのは、フックさんから渡された日本語の資料でした。見ると、神奈川大学の日本常民文化研究所発行の鍋田尚子さんの論文でした。日本の研究者も度々訪ねてくるほど有名な場所だと知りました(インターネットで読めるものがありました)。


(フック氏から渡された資料の一つ。日本語の研究論文でした)

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(フック氏の工房に飾られた数々の版画作品)

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子どもたちの前で説明するフックさん。

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子どもたちは、こうした場所に来るのは初めてのこと。もちろん、版画もやったことがありません。

まずフックさんがやり方のお手本を見せてくれました。今回、刷るのは干支の動物たちです。

 

干支は日本にもありますね。ベトナムの干支は日本と少し動物の種類が異なります。たとえばベトナムではウサギはいなくて、代わりにネコだったりします。

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ある生徒が気をつかって、わたしの干支を刷ってくれました。イヌです。

 

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摺り終わった紙をフックさんに持っていくと、公式スタンプを押してくれます。

ほとんどの子どもたちはがんばって全種類を刷っていました。楽しそうで何よりでした。

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つづいて向かったのは、タンティエン村です。ここでは紙細工の花の工房があります。

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こちらも先祖崇拝の儀礼で使う花で、かつては本物の花を乾燥させたものを使用していたようですが、紙で代替するようになり、現在では写真のような形で儀式の際に飾られています。これも実際に作ってみることになりました。

 

あらかじめカットされた色紙を順番に串に通して、のりで貼り付け、形を整えていきます。

ちなみに、のりは普通ののりではなく小麦粉を溶いたもので、こちらのほうが乾燥が早く、値段が安いので大量に用意できるとのこと。


完成した花をもつ子どもたち。みんな上手いですね。

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移動の途中で、フエ出身で独立運動に関わった有名な活動家グエン・チ・デューの記念館も見学しました。

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子どもたちの感想を紹介します。

「今日はとても楽しくて創造的な経験をたくさんできました。おもしろい経験をさせてくれてありがとう!」

 

「BAJの夏休みの課外活動はとてもうれしい経験になりました。版画や紙の工作を学びに村に出かけるのは初めてでした。もっと出かけたいです。ありがとう BAJ!」

 

「今日の活動はとても楽しかったです。紙の花の作り方を学び、昔ながらの版画の刷り方を学びました。次回も今回のような活動だったらいいなと思います。たのしい旅をありがとうございます」

 

この日もとても暑かったですが、参加した子どもたちは大満足だったようです。

 

こうした民間の伝統文化や技術を伝える場所が身近に存在している環境はなかなかないと思います。うらやましい気持ちになりました。自分たちの住む地域のいろいろな価値に気付くことは自信や誇りにつながります。あらためて子どもたちの将来がたのしみになりました。

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●この活動は、輝けアジアの子ども基金 のご支援や皆さまからのご寄付によって行われています。

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