報告者:東京事務所 新石
7月、ネピドーでの村落開発局との会談を終えて、深井戸修繕事業の対象村落の再選定調査について許可を得ることができました。そして、8月に5郡10か村の調査を完了し、先日、調査報告書をまとめました。
対象地域は、マグウェ地域とマンダレー地域のうち、5郡のなかから10か村です。当初は6郡でしたが、ナマウ郡の治安悪化が著しく、事業実施は困難と判断し、5郡から選定し直しています。
(ウーイン西村にて水管理委員会から井戸稼働状況の聞き取り)
本事業の実施体制は、2017年にBAJが資機材等をハンドオーバーした後継組織(元BAJスタッフが代表)National Water Service Group略してNWSGと協働して行なう形です。
NGOへの監視と締付けが厳しくなる現状で、日本人駐在員を置くリスクへの対処、そして、そもそもMOU(覚書)がカウンターパートと結べない状況下でビザ取得が困難を極めている現状への対処として、そうした形態を取っています。
(NWSG事務所の敷地内)
かつて私が中央乾燥地域に駐在して水供給事業に関わっていたのは10年前。現地から送られてくるレポートを見て、変わったところ、変わらないところが見えてきます。
まず、変わったところは、使用されているポンプがほとんど水中ポンプに換装されたことです。10年前はまだMONOポンプ(構造が単純で動かしやすい半面コアパーツが高価)が多かったですが、現在では全体の2割ほどになりました。また電力を確保する手段が格段に増えました。燃料と発電機でポンプを稼動させる村もまだ多いですが、グリッドの電力を使って稼働させている村や、太陽光発電でポンプを動かしている村も出てきています。そして、深井戸の設置はある程度目処がついた状況で、今度は浄水や配水への関心が高まっており、10年前ではまだ珍しかったパイプラインシステムが普及し始めています。
(カウンニョ村の貯水タンクとソーラーパネル発電設備)
反対に、変わっていないところは、それでも変化はゆっくりであることです。クーデターの影響で経済が悪化した現状ではその状況に拍車がかかっています。修繕ができずに閉じられた深井戸、老朽化するエンジン保管庫、操作盤など、経年劣化に対応したメンテナンスが不十分な状況は変わっていません。そして、たとえグリッドの電力があっても、深井戸を稼働させるシステムが資金不足で組み上がってない村もありました。深井戸修繕事業ができることは、ミャンマー全体が困窮している現在だからこそ、緊急性が高い事業になっています。
(アライボー村の老朽化した旧型ポンプ)
(タプースー村の稼働を停止した深井戸)
現在は、各村落の井戸の状況から、必要な資機材調達の青写真を作り直しています。修繕事業が速やかに実施できるように、さらに当局へ働きかけを進めています。
また、10月末には日本人の専門家をオンラインで交えた現地の水供給を担う技術者たち向けの研修を行なう計画です。
ミャンマーは支援ニーズが高いにも関わらず、混乱した政治情勢と内戦の影響で支援が集まりにくい状況が続いています。そのようななか、変わらぬ皆さまからのご支援に厚く御礼申し上げます。今後ともご理解とご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
(ビングワ村の老朽化したエンジンと発電機)
● 本事業は外務省NGO連携無償資金協力事業(N連)資金と皆さまからのご寄付によって実施しています。
Copyright(C)2024 BRIDGE ASIA JAPAN. All Rights Reserved.