報告者:東京事務所 大野
ラカイン州では内戦が続いており、BAJはすべての活動を停止しています。
アラカン軍(AA)は、南北に長い同州の北部から国家行政評議会(SAC)軍や、傘下の国境警備隊の基地を攻略し、町を掌握し占領地を州南端近くにまで広げています。BAJ事務所のあるマウンドーは、州北部3郡のなかでSAC軍が管理する最後の町です。
6月にはいると、マウンドーにある複数の国際援助機関の事務所が、物資の大量盗難や焼き払いにあったり、軍の駐留陣地に使われはじめたりしました。BAJ事務所でも夜間の破壊や盗難の被害がつづき、出勤はもちろん昼間の短時間の見回りもしにくくなりました。毎日毎夜、町のすぐそばで砲撃戦や空爆が行なわれ、AAは残留住民に退避勧告を発しましたが、住民が町から安全に逃げる経路はなく、数万人が閉じ込められ続けました。
7月末になると、BAJ敷地内にも爆弾が落ち建屋や車両に被害が出ました。一刻も早く残留職員は町を脱出すべきなのですが、市外への移動は許可されておらず極めて危険で、東京やヤンゴンからはただ彼らとその家族たちの無事を祈ることしかできませんでした。そのころ1人の職員から、「河を渡ったバングラデシュに逃れた」との国際電話が入りました。
重火器に被弾したBAJの敷地。建物、車両に被害が出ています。
8月上旬、AAによる町の占領戦が本格化したため、残るBAJ職員らも生命を失う危険を冒して脱出を試みました。ある職員はなんとか無事に近くの村に逃げのびました。別の職員は大河の向こうのバングラデシュを目指そうとしましたが、川岸で住民の無数の被爆遺体を目にして町に戻りました。町では沢山の空爆ドローンが飛んでおり、その様子を「オオコウモリの群れのようだ」と報告しています。その後彼と家族らは、侵攻してきたAA兵に連れられ町外の避難民キャンプにたどり着きました。キャンプでは、食料・水・医薬品が足りず、下痢で複数の死者が出ています。8月27日現在、マウンドー市街には住民はほぼいなくなり、SAC軍とAAとの間で地上戦や空爆、砲撃、ドローン攻撃戦が続いている模様で、BAJ事務所の様子も把握できなくなりました。
5月ごろまでに町から首尾よく脱出していた職員らは、地上戦がなくなった村落部で暮らしを立てなおそうとしていますが、物価は高く、空爆や地雷の被害も散発しており平和とは程遠い状況が続いています。
村々に散らばった職員たちには、いつの日かまたBAJに戻ってもらい、平和な暮らしの再建に取り組んでもらいたいと願うばかりです。
●ラカイン州における事業は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)および皆さまからのご支援で行っています。
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