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誤爆回避のロゴ描画 :ミャンマー

誤爆回避のロゴ描画 :ミャンマー

報告者:マウンドー事務所 U Zin Min Htike

BAJは2024年もUNHCRと事業実施パートナー契約を締結しました。しかしながら昨年11月13日にラカイン州北部ではじまったミャンマー国軍とアラカン軍の間での内戦により、敷地外でのほぼすべての活動を停止し4か月がたち、再開の見通しも立ちません。直近におこなった「リスク回避対策」をマウンドー事務所のU Zin Min Htikeが報告します。

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事務所のあるマウンドー町は、州に17ある郡のひとつマウンドー郡の中心の町です。すでに7つの郡を攻略しているアラカン軍は、マウンドー郡内でも集落や国軍基地を順次掌握していっており、マウンドーの町の近くまで迫っています。国軍は戦闘機やヘリコプターからアラカン軍を攻撃するため、あらゆる建物に誤射や巻き添え被害の可能性があります。

UNHCRのマウンドー事務所は、空爆や重火器による誤爆を防ぐために5つの建物の屋根に国連ロゴを描くことにし、1月下旬BAJに作業を要請してきました。事務所は町から3 kmほど離れており、途中の検問所を通って作業に通う業者や人夫が見つからなかったのかもしれません。インフラ部門と技術ワークショップ部門をもつBAJは、このような作業にも慣れており人員もいます。すべての援助機関が活動を停止したあとも、ワークショップの整備士たちはUNHCR事務所の発電機の修理や定期整備に通っており、検問所も特別な手続きなく通過できます。UNHCR建屋の塗装などはパートナー契約には盛り込まれていませんが、困ったときはお互いさまとの考えで、支援を決めました。



BAJ敷地内で型枠を作り、数キロ離れたUNHCR事務所に持ち込みました。既定の青で屋根を全塗装し型枠で「UN」ロゴを白に塗り仕上げました。



国連ロゴは文字のフォントや色が厳格に決まっており、描画する際はこれに沿っておこなわなければなりません。屋根全面を国連規定の青色で塗り、型枠を使って“UN”ロゴを白色で描きます。

作業手順は以下です。まず、UNHCRスタッフから建屋と“UN”文字の図面を入手しました。インフラ部門の上級エンジニアが描画サイズを決め作図し、型枠作成をインフラ職員がおこないました。型枠のサイズは 10フィート(約3メートル)×8フィート(2.4メートル)で、かなり大きなものです。素材にはビニールを使い、BAJの作業所内でカットし前準備を整えました。

5つの建屋の屋根を塗り、計14のUNロゴを描くのは相当な作業量です。戦況切迫を考慮すると、作業は早期に短期間で終えねばなりません。BAJはインフラ職員、技術ワークショップ職員、運転手のほぼすべてを現場に動員し120人時を使って1週間後の2月2日にすべての作業を終えました。UNHCR事務所は職員の多くが別地に避難していますが、残る数名の職員からはBAJの着手の早さ、作業の速さと正確性を高く評価され、またおおいに感謝されました。マウンドーの多くの家屋の屋根は無塗装のトタン板でさびて暗色になっており、シンプルな青白は、空から見て目を引くと思われます。何事も起きないことを祈ります。

1月に我われは、地上戦に備えて敷地の外壁や車両に、BAJのロゴや日の丸を描きましたが、誤爆回避のために屋根にロゴを描くことは思い付きませんでした。早速、BAJマウンドー事務所でも同様の対応をすることにし、準備に取り掛かりました。

公共の通信手段が途絶えたなか、東京にいる所長とマウンドーの上級エンジニアがなんとか連絡を取り合い、多くの建物のどの屋根に描くか、サイズはどうするか、日の丸や「JAPAN」のロゴのサイズやフォントはどうするかなどを打合せしました。職員にとってその後の作業は慣れたものです。13棟ある大小の建屋のうち、配置などから選んだ6棟の屋根に、日の丸と「JAPAN」の組み合わせを12か所、BAJを3か所、できるだけ大きく描きました。

物資が困窮し思うような色や量のペンキが手に入らないので、必ずしも思い通りにはいきませんでしたが、「無いよりはまし」と信じることにしました。






「BAJ」は3か所に、日の丸と「JAPAN」の組み合わせは、その効力に期待して6棟の屋根の12か所に描きました。



その後、これらの危機対応措置を知ったユニセフからも、同様の支援要請がありました。即応してあげたかったのですが、我われの活動や雇用の原資はUNHCRの資金です。作業は直接ユニセフと進めるとしても、UNHCRからの依頼を受けなければ取り掛かれません。ユニセフの職員は全員マウンドーから退避しており、現地には土地と建屋の所有者と警備会社職員のみ。州内だけでなくヤンゴンなど各地も停電や通信遮断があるなか、避難先のユニセフ職員やUNHCR職員、現地の物件所有者との連絡は、なかなか円滑にいきません。数日かけて合意がなされ手続きを終え、UNHCRと同様に青地に白のUNロゴを依頼にしたがった位置、向き、大きさで描き終えました。日本の皆さんには想像しにくいと思いますが、当地の特殊事情(巻末*)のために着手に向けた話し合いや、正確な作業のための打合せや準備はとても骨の折れる仕事でした。

これから先、内戦がどのように展開するのかわかりませんが、私たちは施設設備を維持し活動再開に備えます。何より職員の安全も確保せねばなりませんが、ほとんどの職員はマウンドーと周辺村の出身で家を持ち、なかには高齢者や病人を抱えた家族もいるので、避難は簡単には決められません。今回描いたマークやロゴが、私たちの命を守ってくれることを祈るばかりです。


*マウンドーの特殊事情

2023年11月以降、マウンドーの街は封鎖され人や物が行き来できません。1月以降停電し、インターネットと電話も遮断されています。マウンドー事務所では、リスクがより高い敷地外の活動は停止し、午前の半日出勤体制としています。東京との通信は、UNHCR事務所の衛星回線を許された時間だけ借りて維持しています。街では物の値段が数倍から10倍に上がり、物資が欠品しています。銀行は閉まり現金が不足しています。

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(翻訳・加筆・修正 大野勝弘)

 ●ラカイン州における事業は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)および皆さまからのご支援で行っています。

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