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安全な水と衛生設備を普及する「給水・衛生設備改善事業」:ミャンマー

安全な水と衛生設備を普及する「給水・衛生設備改善事業」:ミャンマー

報告者:マウンドー事務所 U Min Lwin

マウンドー事務所のシニアエンジニアU Min Lwinから「給水・衛生施設改善事業」の現況報告が届きました。BAJのインフラ整備事業は、1995年から続く長い歴史を持ちます。今年は18人の職員体制で、学校校舎の建設と井戸掘削を予定していましたが、政変の影響でへき地村での実施許可がなかなか下りません。そこで、市街地の公共施設において、汚損し不足している給水・衛生施設の整備を3月にはじめました。工作物の設計施工・技術管理を統括するU Min Lwinは、モン州出身の61歳。2008年に入職したベテランで、 これまでにモン州、カイン州、ラカイン州でBAJのさまざまな事業をけん引してきました。

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村落部への移動がラカイン州当局から許可されず、予定していた国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)から委託された学校建設などをはじめる目途がたちませんでした。そこで、UNHCRやマウンドー郡事務所と協議を重ね、マウンドー市街地で公共施設の給水・衛生設備の改善事業を新たににはじめることになりました。マウンドー総合病院は地域医療の拠点にもかかわらず、給排水設備が能力不足なうえ壊れかけていたため、まずここから着手することになりました。


計画は、井戸の掘削と8,000リットルのタンクを持つ給水塔2塔の建設、うち1棟への浄水処理装置の設置、屋外トイレ2棟と浄化槽4基の建設、敷地内にある職員アパートの浴室・トイレの改修と給排水配管、送水ポンプ小屋および送水系の整備です。使用できる安全な生活水を増やこと、トイレなどの衛生施設を増やすこと、および給排水の経路を更新増強することで、病院の基盤的機能の強化と職員自身の衛生的な生活を確保するものです。

1月に事前調査を、2月に掘削地点を決める物理探査などの技術調査を実施し、並行して郡事務所との計画調整、UNHCRとの資金繰り調整を進め、3月に着工にこぎつけました。 6月上旬現在井戸掘削は完了し、屋外トイレは7割程度、給水塔と給排水系は4割程度作業が進捗しています。



帯水層や地下の構造を調べる「物理探査」。 井戸の掘削ポイントを探す重要な工程です。
電気抵抗の測定をシステマティックにおこない、データを丹念に取ります(写真右端がU Min Lwin)。

収集データを整理し解析します。最終的に測定エリアの地下の3次元構造を把握します。
掘削の終盤作業。ケーシングパイプの挿入です。(左帽子は掘削班長のU Zubyre Din)



事業を進めていく過程で、予想外の事態にも直面しました。はじめに2月の物理探査と井戸掘削では、非常に苦労しました。というのも、当地の帯水層の分布は複雑で、さらに塩水と真水の層が入り組んでおり、井戸の掘削地点候補を決めるためにおこなった物理探査は5か所に及びました。さらに掘削に当たっては、塩水層を避けて掘り進め、水質が適当で十分な水量が見込める真水の層で掘削を終え井戸管を設置せねばなりません。1本目の掘削で出た水は塩分濃度が高く利用不適であったため、数メートル離れた地点を掘り直し、30 mの深度で好適層を確定し井戸管を設置しました。

 

また、5月中旬には非常に強いサイクロンが襲来し事業に影響しました。マウンドーでは秒速70 mの暴風と高潮の恐れがあったため、BAJ事務所と作業現場では事務機器や資機材の防水対策や高所移動を行い、職員と雇用作業者も避難しました。サイクロン通過後、倒木除去や事務所建屋の損壊復旧を行いながら、停電と電話不通のなか病院での建設作業を再開しましたが、工期が10日間ほど遅延しました。また作業者4人が、被災した自宅の片づけや修繕でしばらく出勤できなくなったことも、工期の遅れに拍車をかけました。さらに復興需要のために建材の価格が上がっており、予算や計画を修正しUNHCRと合意せねばなりません。



トイレの浄化槽用の穴を掘っています。後ろにある既存のトイレは壊れかけています。
トイレを長期に機能させるには、十分な大きさの浄化槽がいります。6フィートまで掘ります。

鉄筋コンクリート施工で、風雨で汚損しない堅牢なつくりになっています。
完成想定絵図。個室2つの屋外トイレを2棟建設しています。



マウンドー総合病院における建設作業は、9月中旬まで続きます。サイクロンによって、州北部の各地で学校や保健センターが損壊しており、得意とするインフラ復興支援についてBAJはUNHCRと調整をはじめました。州当局の許可がネックですが、現有の委託事業だけでなく、下期にはサイクロンで被災したインフラの復興も手掛ける可能性があります。資材や燃油の価格が上昇しはじめており、事業と予算計画を逐次練り直しながら地域社会に貢献していきたいです。



●本事業は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)資金および皆さまからのご支援により実施しています。

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