報告者:ヤンゴン事務所 森
BAJは、2016年までに、ミャンマーで241校の学校校舎の建設・修繕を行ってきました。先日、2か所の学校視察を行いました。1か所はBAJが長く活動するラカイン州(西部、バングラディシュとの国境に位置)、もう1か所はヤンゴンです。
ラカイン州の学校では、完成したばかりの学校や、4年前に完成した学校を訪問しました。BAJでは、ヤンゴンでプロジェクトを実施したことがありませんので、ヤンゴンの学校訪問は新鮮で、地方とヤンゴンでは状況が違うこともこの目で確認することができました。
ラカイン州学校
ラカイン州の学校は、学校の敷地は比較的広くあります。ただし、学校建設用の資金が村にはなく、自助努力で建てた校舎があるのがほとんど。木材で倒れそうな校舎もあれば、なんとかレンガで建てた学校もあります。
完成したばかりの学校でPTAと話し合い
4年前に建てた学校を訪問した時に、このプロジェクトのインパクトを実感しました。この4年間で、小学校→準中学校→中学校分校と昇格していました。学校に十分なスペースがあり、適切な教育の場であると政府から判断されると、その学校は昇格し、村の中でより長い教育課程を提供できるようになります。それまで、準小学校や中学校分校へ通学するには、隣村までの遠い道のりに時間やお金をかけて行かなければならず、貧困家庭では進学を諦めることもありました。
広い学校の校庭には、ユーカリの木が植林されていました。防風林をイメージして植林しようと、村人たちで考え、森林局から無償でもらえるユーカリを植えたそうです。森林局が提供するのは、ほとんどがユーカリやアカシアなど外来の早成樹で、生態的、社会的にはやや問題ありとする考えもあるそうですが、こういった村人たちの自主的な活動は、良い事例として、他村へも伝えていきたいと感じました。
学校敷地内に植えられたユーカリの木
校舎の中からユーカリの木の葉がそよぐのをみながら、先生や村人たちとユーカリの木の特性について、蚊がよってこない効果、伝統薬としての効果、火事には気をつけよう、など談笑し和やかな時間を過ごしました。
ヤンゴンでは、タンリン郡にある学校3校を訪問しました。どこに学校をたてるのが適切かを見極めるのが目的でした。ヤンゴンの一番の特徴は、敷地が狭いことが挙げられます。増築しようとも十分なスペースがないところが多いようです。
なるべく困窮度の高い場所に新校舎は建てたいですが、そういう学校には、
・新しく学校を建てるには十分なスペースがない
・あっても傾斜がきつく校舎建設の基礎工事へ追加の資金投入が必要になる
・スペースは問題ないが図書室と音楽室が欲しい
といったような、その他と学校と比較して困窮度が低いといった具合で、「ここだ!」という場所がたくさんあるわけではなさそうです。
今後も引き続き、時間かけて「ここだ!」という場所選びは続きます。
職員室での話し合い
また、ラカインのケースのように、新しく学校校舎を建てることにより学校が昇格していくケースはあまり望めない印象を持ちました。中学校分校は、徒歩15分ほどのところにありそこに行けばいい、という認識があるようです。
1か所興味深かったのは、2013年に小学校3年生の在籍数が53人だったところ、2016年には83人となっていたことです。これは、かなりの増員です。明確な理由は、不明ですが、村人と話していると、近くに日本政府が投資して建設されたティラワ工業団地での仕事が増えてきたことにより移住世帯が増えていることが理由として挙げられるようです。
実際にこの村から、男性は建設資材の運搬、女性は縫製工場の女工として働きにいっている方たちがいるようです。ティラワ工業団地はこれから工場がもっと増えていきますから、周辺住民の方への就労機会が増え、地方から出稼ぎ労働にくる世帯ももっと増えることが予想されます。こういう背景がある学校は、教室が足りない事態になっていき困窮度が高いと言えます。
ところで、6月1日から小学校1年生課程で日本政府が支援した新しいカリキュラムが導入されるそうです。体育や図工など、これまでなかった科目も導入されます。これまでミャンマーでは、5才に入学して11年かけて高校課程修了するシステムでしたが、今後は、6才で入学して12年かけて高校課程修了する、日本と同じシステムになりました。
教育分野は変わっていくのに時間がかかるものですが、まずは最初の1歩が踏み出されました。今後のゆくえを見守っていきたい、そして、BAJも微力ながら、これからもミャンマーの教育に貢献をしていきたいと思います。
●ミャンマーでの学校建設事業は、ヤンゴンでは株式会社熊谷組、ラカイン州では日本財団および皆さまからのご支援で行っています。
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